【眠れない漫画紹介】①フラジャイル病理医岸京一郎の所見
2020年9月現在、18巻まで出ている「フラジャイル病理医岸京一郎の所見」を紹介します。
一言でいえば、めちゃくちゃカッコいい漫画です。
一言すぎてさっぱり伝わらないと思うので、3つの角度からそのカッコよさを紹介していきます。
- 【構成がカッコいい】最新医療に基づいた圧倒的リアリティを追求した病院・医薬業界の闇
- 【キャラクターがカッコいい】医療業界にはびこる一本筋の通った変人たち
- 【熱さがカッコいい】それぞれがそれぞれの理を通すシビれる展開
医療者や製薬業界にお勤めの方ならのめり込むこと間違いなしの世界観です。
【概要】病理医を中心とした病院の現場や製薬業界が舞台の知的ドラマ
フラジャイルは2016年にフジテレビ系にて長瀬智也さん主演でドラマ化されました。
医療ドラマってどのクールでもだいたい1~2作あるくらい人気が高いジャンルですよね。
医療ドラマと言えば主人公が医者や看護師が定番ですが、
最近ではかなりマニアックな医療業種にまで脚光が浴びるようになりました。
- 家政夫のナギサさん:MR
- ラジエーションハウス:放射線科医と診療放射線技師
- アンサングシンデレラ:病院薬剤師
何とも、ニッチが注目される世の中です。
医療ドラマの定番であった「生死をテーマにしたお涙頂戴」はもはや副主題です。
ドラマや漫画は単なる娯楽にとどまらず、
これまで見向きもされなかった専門的な業界の問題を発信するツールにもなっているようですね。
病理医とは
本作の主人公は病理医です。めちゃくちマニアックな切り口です。
2004年の厚労省の資料によれば、病理専門医は全医師数のうち、0.76%しかいません。
患者を持つことなく顕微鏡をひたすら覗いて診断書を書き、病理解剖を行うのが仕事です。
病理医の下した診断を元に、臨床医が診断を確定したり治療効果を検討します。
そのため、病理医は臨床医のための「Doctor’s doctor」と呼ばれていたりします。
病理医の裏方職人っぽさが伝わりましたでしょうか?
【構成】最新医療に基づいた圧倒的リアリティを追求した病院・製薬業界の闇
本作は、漫画やドラマによくある設定ですが、
現実世界では常識とされているタブーやその業界の闇を
「スーパーな主人公」が鮮やかに論破していく痛快劇でもあります。
作品の提供と同時に、読者に一石を投じているわけですね。知識欲をくすぐる作品です。
- 医者のマニュアル対応に喝
- 医者や医療従事者の働き方と医療サービスの限界
- 治療方針を決める患者さんの心構え
- 病院経営の崩壊
- 承認されていない治験薬をめぐる患者と臨床医、製薬会社、開発者それぞれの想い
- 製薬会社はコスパの悪い創薬開発よりもビジネスを優先させるのか
製薬業界サイドの物語もよく俯瞰された構成になっています。
ノーベル医学生理学賞の本庶佑さんと小野薬品とのわだかまりも有名ですが
医療とビジネス、創薬開発と研究費は、この国の財政問題にもつながる深い問題であることが
作品中で何度も警告されています。
オプジーボの適応拡大やそれに伴う遺伝子検査の未来についてなど、かなり最先端の内容で、
私は医療サービス業が本職なのですが、正直、漫画からかなり学ばせてもらいました。
【キャラクター】確かに医療業界は現実世界でも変人だらけ
フラジャイルは笑いのセンスも最高です。おまけの4コマも大好物です。
各キャラクターが特殊すぎるんですが、
よくよく考えれば現実世界でも医師をはじめ医療業界って変な人多いなと。
頭の切れる人たちって、やはり標準偏差から高めに外れているだけあって
「普通=凡人=圧倒的大多数」からは思いもよらない言動をされるのだと思います。
「論理的で理屈ばかりこねる知的ダークヒーロー」(岸、間瀬、中熊)や
「オタクなスペシャリスト」(森井、円)が
「正統派真っ直ぐさん」(宮崎、火箱、高柴)を席巻するような構図です。
大量の情報が渦巻く現代のヒーローのあるべき姿かもしれませんね。
【熱さ】それぞれがそれぞれの筋を通す、大人なカッコよさ
いろんな立ち位置の登場人物がいるのですが、誰もがそれぞれの方向で熱いんです。
ダークヒーローたちは、笑顔すら浮かべず「すべてお見通しですけど何か」的な
神がかった余裕の安定感が頼もしいのですが、
実はしっかり熱い物を持ってるんですよね(間瀬パイセンはおそらくAIですけど)。
みんな一生懸命で、叩かれて、くたくたに疲れて、
それでも「誰か」や「信念」や「誇り」のために歩を進めるお話です。
熱量が高めのため、毎巻読後感がハンパないです。
頑張りたいときに併走してくれるような作品です。
【結論】「フラジャイル」はできる大人のための漫画
原作者の草水敏氏がは医者ではないということも驚きです。
病理医50人くらいにインタビューし、専門書を読みこんだとのことですが、
あの医療現場や医者の心情を精密に表現できるのは脅威としか言いようがありません。
医者ではない人間が「Doctor’s doctor」の物語を作る。相当のプレッシャーがあったのではないでしょうか。
よほどのチャレンジ精神と努力がなければここまで完成度の高い作品はできなかったと思います。
実は私は臨床検査技師として、病理医の下で働いたことがあります。
また、治験コーディネーターとして、製薬会社とお仕事する機会もありました。
そのため人一倍思い入れ深くこの作品を読んでいるのではないかと思います。
治験薬の部分で火箱ちゃんが細工をしていたのはちょっとナンセンスな部分でしたけど
それ以外は「漫画的な脚色」はあるものの、リアリティの高い作品だと思います。
フラジャイルは知識欲を満たして、笑いをくれて、モチベーションと高めてくれる、
ザ・できる大人のための贅沢な漫画です。
以上、【眠れない漫画】「フラジャイル」の紹介でした。
今日もここまで読んでいただきありがとうございます★
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